熱貫流率とは?U値が低いほど断熱性が高い理由と窓フィルムの見方
熱貫流率とは?U値が低いほど断熱性が高い理由と窓フィルムの見方
窓ガラスや断熱フィルムの性能表で見かける「熱貫流率」や「U値」。数字が小さいほど断熱性能は高くなりますが、日射熱取得率や遮蔽係数とは測っている熱が異なります。
この記事では、熱貫流率の意味・単位・計算方法から、日射熱取得率やUA値との違い、窓ガラスフィルムを選ぶときの注意点まで、環境省・JISなどの資料をもとに、窓ガラスフィルム専門店のヨリ窓がわかりやすく解説します。
熱貫流率とは、温度差による熱の通りやすさ
熱貫流率(thermal transmittance)とは、壁・屋根・床・窓などの両側に温度差があるとき、その部位を通過する熱量を示す指標です。「U値」とも呼ばれます。
環境省の環境技術実証事業(ETV)資料では、窓ガラスフィルムに関する熱貫流率を、フィルムを貼った3mmフロート板ガラスの両側の空気温度差が1℃のとき、面積1㎡当たり単位時間に通過する熱量として説明しています。
熱貫流率が低い=温度差による熱が通りにくい=断熱性能が高い
冬は暖房した室内から寒い屋外へ、夏は暑い屋外から冷房した室内へ熱が移動しようとします。熱貫流率は、この室内外の温度差による熱移動を考える数値です。
熱貫流率の単位と計算式
熱貫流率の単位は、W/(m²・K)です。1Kの温度差は、温度差としては1℃と同じ大きさです。
基本式
Q = U × A × ΔT
- Q:通過する熱流[W]
- U:熱貫流率[W/(m²・K)]
- A:面積[m²]
- ΔT:両側の温度差[K]
熱貫流率を求める形にすると、U=Q÷(A×ΔT)です。
計算イメージ
説明用に、面積2㎡、室内外の温度差20Kという同じ条件で比較します。
| 仮定したU値 | 計算 | 通過する熱流 |
|---|---|---|
| 6.0W/(m²・K) | 6.0×2×20 | 240W |
| 4.0W/(m²・K) | 4.0×2×20 | 160W |
※数値は計算方法を説明するための仮定であり、特定のガラス・フィルムの性能値ではありません。年間の冷暖房費削減額を示すものでもありません。
なぜ熱貫流率は低いほど断熱性能が高い?
同じ面積・同じ温度差なら、U値が低いほど通過する熱量が少なくなるからです。
- U値が高い:温度差による熱が移動しやすい
- U値が低い:温度差による熱が移動しにくい
冬に期待されること
室内の暖房熱が窓から逃げる量を抑えやすくなり、窓際の冷えの軽減につながります。室内側ガラス表面の温度低下を抑えることで、結露の発生を抑えやすくなる場合もあります。
夏に期待されること
外気の暑さと冷房した室内との温度差による熱流入を抑えやすくなります。ただし、夏の窓では太陽の日射熱の影響も大きいため、U値だけでなく日射熱取得率なども確認する必要があります。
熱貫流率と日射熱取得率・遮蔽係数・UA値の違い
窓の性能表には似た言葉が並びますが、それぞれ見ているものが違います。
| 指標 | 何を示す? | 数値の見方 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 熱貫流率(U値) | 温度差による部位の熱の通りやすさ | 低いほど断熱性が高い | 窓・壁など部位の断熱性能 |
| 日射熱取得率 | 室内へ入る日射熱全体の割合 | 低いほど日射熱を抑えやすい | 夏の日差し・遮熱性能 |
| 遮蔽係数(SC) | 標準ガラスに対する日射熱取得の相対値 | 低いほど日射熱を抑えやすい | 遮熱フィルムの比較 |
| UA値 | 建物外皮全体の平均的な熱の逃げやすさ | 低いほど建物全体の断熱性が高い | 住宅全体の外皮性能 |
| 可視光線透過率 | 目に見える光が通る割合 | 高いほど一般に明るい | 明るさ・透明感・見え方 |
U値と日射熱取得率は別々に確認する
U値が低くても、日射熱取得率が高ければ、日当たりのよい窓から太陽熱を多く取り込む場合があります。反対に、日射熱取得率が低くても、U値が高ければ室内外の温度差による熱は通りやすいままです。
詳しくは、日射熱取得率とは何か、遮蔽係数とは何か、窓の遮熱と断熱の違いもあわせてご覧ください。
ガラス中央部のU値と窓全体のU値は同じではない
性能表のU値を比べるときは、どこまでを評価している数値か確認することが重要です。
日本規格協会が公開しているJIS R 3107:2019の概要では、同規格が算定するのは建築用板ガラス中央部の熱貫流率です。複層ガラスのスペーサー、真空ガラスのエッジシール、窓枠などの熱橋によるエッジ効果は含まれません。
- ガラス中央部のU値:ガラス部分を中心に評価
- 窓全体のU値:ガラス、サッシ、端部などを含めて評価
- 建物のUA値:窓だけでなく壁・屋根・床など外皮全体を評価
そのため、ガラス中央部の数値と、サッシを含む窓製品全体の数値を、そのまま横並びにすることはできません。カタログでは「ガラス」「フィルム貼付ガラス」「窓全体」のどの性能値かを確認しましょう。
また、すき間風による熱移動は、ガラス中央部のU値だけでは判断できません。窓際の寒さには、サッシ性能、気密性、ガラス端部なども関係します。
窓ガラスフィルムを貼ると熱貫流率は下がる?
製品によります。すべての窓ガラスフィルムが、熱貫流率を大きく下げるわけではありません。
| フィルムの主な種類 | 主に見る性能 | U値の考え方 |
|---|---|---|
| 日射調整・遮熱フィルム | 日射熱取得率、遮蔽係数、日射透過率など | 主目的は日射熱の抑制。断熱性能は製品仕様を個別確認 |
| 低放射・断熱フィルム | 熱貫流率、放射率、日射熱取得率など | 室内側からの熱放射を抑え、U値を低くするよう設計された製品がある |
| 透明UVカット・飛散防止フィルム | 紫外線透過率、飛散防止性能など | 貼るだけで高い断熱性能が得られるとは限らない |
日本ウインドウ・フィルム工業会も、省エネフィルムを、日射熱を抑える「遮熱フィルム」と、遮熱機能に加えて室内の熱を逃がしにくくする「低放射フィルム」に分けて説明しています。
低放射フィルムは、表面からの熱放射を抑えることで冬の熱損失を減らすよう設計されています。ただし、ガラス交換や内窓設置と同じ構造になるわけではありません。目的・予算・窓の状態によって適した方法は変わります。
断熱・遮熱フィルムを選ぶときの7つの確認ポイント
- 冬の寒さか、夏の日射熱か:一番困っている悩みを明確にする
- 熱貫流率:冬の断熱性を重視する場合はU値を確認する
- 日射熱取得率・遮蔽係数:夏の暑さを重視する場合に確認する
- 可視光線透過率:室内の明るさをどれくらい残すか確認する
- ガラスの種類:単板、網入り、複層、Low-Eなどを確認する
- 見え方:色味、反射感、昼夜の見え方をサンプルで確かめる
- 施工適合性:メーカーの適合表や熱割れ検討を確認する
「一番低いU値」が必ず最適とは限らない
住宅・店舗・オフィスでは、断熱性能だけでなく、明るさ、外観、日射の入り方、冬の日射取得、ガラスへの適合性なども大切です。
たとえば、冬に南面の日差しを暖かさとして利用している窓では、日射を強く抑える製品が年間を通して最適とは限りません。窓の方位や使用目的ごとにバランスを考えます。
建築窓ガラス用フィルムの規格については、JIS A 5759の解説をご覧ください。ガラスへの施工可否は、窓ガラスフィルムと熱割れの解説も参考になります。
環境省・JISなどの資料で確認できること
- 環境省 ETV資料:フィルム貼付ガラスの熱貫流率を、両側の空気温度差が1℃のときに1㎡当たり単位時間に通過する熱量として説明しています。
- JIS R 3107:2019:建築物の外皮に使用される板ガラス中央部の熱貫流率(U値)の算定方法を規定しています。
- JIS A 5759:2024:建築物の窓・出入口などのガラスに用いる建築窓ガラス用フィルムを規定しています。
- 国土交通省の建築物省エネ法資料:外皮の仕様基準で熱貫流率と日射熱取得率を別の基準として扱っています。
- 日本ウインドウ・フィルム工業会:遮熱フィルムと、冬の熱損失も抑える低放射フィルムを区別して説明しています。
環境省のETVは、第三者試験によって技術の性能情報を公表する事業です。JIS認証や、すべての建物で同じ省エネ効果が得られることを保証するものではありません。
熱貫流率についてよくある質問
Q1. 熱貫流率とは何ですか?
室内外の温度差によって、窓・壁・屋根などをどれくらい熱が通り抜けるかを示す指標です。U値とも呼ばれます。
Q2. 熱貫流率は低い方がよいですか?
断熱性能だけを比べる場合は、低いほど熱が移動しにくく、断熱性が高いと判断します。ただし、窓選びでは日射熱取得率、明るさ、方位、外観などもあわせて確認します。
Q3. 熱貫流率の単位は何ですか?
W/(m²・K)です。面積1㎡、両側の温度差1K当たりに通過する熱流を表します。
Q4. 熱貫流率はどう計算しますか?
基本式は「U=Q÷(A×ΔT)」です。Uは熱貫流率、Qは通過する熱流、Aは面積、ΔTは両側の温度差です。実際の製品性能は、規定された試験・算定条件による値を確認します。
Q5. 熱貫流率と日射熱取得率の違いは何ですか?
熱貫流率は室内外の温度差による熱の通りやすさ、日射熱取得率は太陽の日射によって室内へ入る熱の割合です。断熱と遮熱を判断するための別の指標です。
Q6. 窓ガラスフィルムを貼れば熱貫流率は下がりますか?
製品によります。低放射・断熱フィルムにはU値を低くするよう設計された製品がありますが、一般的な遮熱・UVカット・飛散防止フィルムのすべてが高い断熱性能を持つわけではありません。
Q7. U値とUA値は同じですか?
同じではありません。U値は窓や壁など特定部位の熱貫流率です。UA値は、窓・壁・屋根・床などを含む建物外皮全体の平均的な熱の逃げやすさを示します。
Q8. 熱貫流率が低ければ結露しませんか?
結露を抑えやすくなる場合はありますが、必ず防げるわけではありません。室温、外気温、湿度、換気、サッシやガラス端部の性能なども関係します。
まとめ|U値と日射の指標を分けて確認しよう
- 熱貫流率は、温度差による熱の通りやすさを示す
- 単位はW/(m²・K)で、数値が低いほど断熱性が高い
- 日射熱取得率・遮蔽係数とは測っている熱が異なる
- ガラス中央部・窓全体・建物全体の数値は分けて考える
- すべての窓ガラスフィルムがU値を大きく下げるわけではない
- 冬の寒さ、夏の日射、明るさ、ガラス適合性を総合して選ぶ
熱貫流率は、冬の寒さ対策や断熱性能を比べるうえで大切な数値です。ただし、窓から入る熱には温度差による熱と太陽の日射熱があるため、U値だけで窓の快適性すべてを判断することはできません。
参考資料・出典・引用元
- 環境省「平成26年度実証対象技術の環境保全効果等」(PDF)(最終確認:2026年7月27日)
- 日本規格協会 JIS R 3107:2019「建築用板ガラスの熱貫流率の算定方法」(最終確認:2026年7月27日)
- 日本規格協会 JIS A 5759:2024「建築窓ガラス用フィルム」(最終確認:2026年7月27日)
- 国土交通省「改正建築物省エネ法オンライン講座・FAQ」(最終確認:2026年7月27日)
- 日本ウインドウ・フィルム工業会「省エネフィルム」(最終確認:2026年7月27日)
- スリーエム ジャパン「遮熱・断熱フィルム LOW-E20 シルバー」(最終確認:2026年7月27日)
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